毒をもって毒を制す。毒も薬もサジ加減◆薬師アルジャン/山下友美【漫画レビュー】
経験は偉大な財産
【この音とまれ!】でも作者の方が琴経験者で、琴一家ということをご紹介しましたが、これまた作者が経験者という枠組みから。
<参照>
薬師アルジャン/山下友美
こちらは、タイトル通りの薬師が主人公。(作者が元薬剤師さん!)
猛毒のバジリスク
ただ、単なる薬師ではなく、実は子供の頃に少しずつ毒を食べさせられ、毒に対する耐性を付けられた身体の持ち主。
それだけでなく、身体は毒に侵されている状態なので、本人からも毒を発してしまう。<素肌で触れると花は枯れる。なのでずっと長袖を着て、手袋をしてます。
誰にも触れられない
もちろん、植物に限ったことではなく、人に触れればその人が毒に侵されてしまう。(大なり小なりあれど)
要するに、誰にも触れられず、誰からも触れてもらえない。
こんな悲しいことってあるでしょうか。しかもこういう事になった理由は、【人間兵器】として利用できるかの実験があったという過去。。。
うーん…。
多角的ヒューマンストーリー
これだけ並べると重苦しい感じですが、ストーリーはそんなテイストではなく。人々の温かさ、醜さ、心のふれあいが織り交ぜられて、とても面白く進みます。
ただ大きくベースとなっているのは、子供の頃、毒見役として連れてこられたお城で仲良くなった、近い年齢の姫との絆と切ない関係。
ありがちな格差だけじゃない
アルジャンは、幼い頃から自分を怖がらずに接してくれた姫を大切に想って、城を追われた後も遠くから守ったりして。ただ、いくら好きであっても、触れることはできない。
それはイコール相手の死に繋がっちゃうから。
姫も唯一の友達として遊んだアルジャンを大切に想っているけど、まず姫だし、それなりの相手との結婚が決まってるし。って感じで、そもそもアルジャンとどうこうっていう道筋がないんですね。
お互いに、姫として、薬師として、人々を助けたり問題を解決したり。明るく楽しいお話が多いけど、ベースとしてはどうしようもならない切なさが常にあって。…深い。
毒と薬は表裏一体
単なる恋愛物ではなく、【人が毒に染まる】という事はどういう事か。毒を身近に持っているからこそ、アルジャンと姫は毒に対して、とても理解が深い。
薬になる材料だって、量を間違えば、毒になる。毒草であっても、量を加減すれば薬になる。単純に毒だからダメってことではないんですね。
甘いも苦いも持ち合わせているのが人間という。
薬師としてのアルジャンが披露する、薬の生成技術、知識などもふんだんに散りばめられているので、勉強にもなるし面白味がたくさんあります。途中、泣いてしまうところもありながら。
まあ、お恥ずかしい話、正直ラストは号泣しちゃったんだけど(笑)
あまり有名ではないかもしれない作品だけど、何度も読み返しているくらい面白い。これこそ、実写化あってもいいと思うけどな…。
実写化は国内設定だけに
いや、舞台が架空の外国設定だから、世界観の表現が【鋼の錬金術師】の二の舞になっちゃうな(爆)こういう中世ヨーロッパ系とか架空国系とか、まず日本人でないものは実写化してはいけませんね。
ま、漫画で充分満足なのでいいや。
薬師アルジャン/全11巻
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